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最高裁判所第二小法廷 昭和58年(行ツ)94号 判決

東京都小平市小川町一丁目九七〇番一一号

上告人

内田和子

東京都東村山市本町一丁目二〇番二二号

被上告人

東村山税務署長 篠原忍

右指定代理人

崇嶋良忠

右当事者間の東京高等裁判所昭和五七年(行コ)第二六〇号所得税額査定金額に対する更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五八年四月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

記録にあらわれた本件訴訟の経過によれば、本件訴訟は第一審において訴えの取下があったものとみなされて終了したとの原審の判断は、正当であり、その過程に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大橋進 裁判官 木下忠良 裁判官 監野宜慶 裁判官 宮﨑梧一 裁判官 牧圭次)

(昭和五八年(行ツ)第九四号 上告人 内田和子)

上告人の上告理由

一、東京地方裁判所昭和五六年(行ウ)第四六号事件につき、昭和五六年一〇月二六日午前一〇時の口頭弁論期日の呼出状は上告人の次男である内田正が受領したものであって上告人が右呼出状を確認したのは、昭和五七年二月二日頃、東京地方裁判所の鶴略書記官の電話によったのである。

従って本件呼出状が上告人に送達されたのは、昭和五七年二月二日である。右書記官自身も上告人に呼出状が届いているかどうか不審に思い電話をかけたものと思われる。

なぜならば法定の期間である三ケ月が徒過すれば裁判所としては問題なく判決をすればよく、書記官が上告人に確認する必要は全くなかった。その証左に東京地裁はわざわざ上告人に口頭弁論再開の申立を促し、上告人が右再開を申立てると、昭和五七年四月一五日に再開され、次回は昭和五七年八月末日頃再度口頭弁論を開いたのである。

この時東京地裁の裁判長は上告人が訴訟追行の意志あることを確認し、裁判を進行しようとしたが、被上告人から期間徒過である旨の申立がなされた。

二、しかしながら上告人が呼出状を受領したのは昭和五七年二月二日のことであるから、右三ケ月の期間は呼出状受領のときから計算すべきであり、且つ裁判所が口頭弁論期日を指定し、双方当事者が出頭しているのであるから、右三ケ月の期間の徒過は治癒されたものと考えるべきである。

ただし、三ケ月の徒過で裁判終了の効果を与えるならば、その後の口頭弁論期日は、裁判してはならない裁判を裁判所が裁判を行ったことになりその裁判所はいかなる根拠に基づいて構成されたものか説明不可能といわざるを得ない。

このことは憲法第三二条の正当に構成された裁判所により裁判を受ける国民の権利にも違反している。

三、又反対に東京地方裁判所の口頭弁論の再開が適法であるとするならば、正に上告人は憲法第三二条の保障する裁判を受ける権利を奪われたのであって、憲法違反といわざるを得ない。

以上

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